2018年08月26日  

冬に注意したい犬の病気とは?普段からできる予防方法の確認

こんにちは!!

今回は『冬に注意したい犬の病気とは?普段からできる予防方法の確認』についてお伝えします。
本記事は、過去に私が寄稿したものを許可を得て転載しています。
無断での引用、転載は禁止しておりますので、ご了承ください。


冬になると気温が下がり、犬の体調にも様々な変化が生じます。また、室内犬にとっては、寒さだけでなく家の中の暖房による乾燥、あるいは寒暖の差が体にとって負担となることがあります。

そこで今回は、冬によく見られる犬の病気についてご紹介し、さらにはそれら病気に対する対策と予防についてもお伝えします。

冬によく見られる犬の病気とは?

冬によく見られる犬の病気は、「皮膚炎」「関節炎」「排尿障害」です。実際に私の病院にも冬場になるとそれらの病気で来院する犬の数がとても増えます。

いずれの病気も、冬の寒さや乾燥が原因で引き起こされたり悪化したりする病気で、かゆみや痛みを伴うものばかりです。なるべく早く気づいてあげることが大切ですし、また、辛い症状が出る前に何かしらの予防方法にて対策してあげることが重要です。

 

皮膚炎の対策と予防方法

冬の皮膚トラブルの原因は”乾燥”

冬に見られる犬の病気の一つである「皮膚炎」。これは主にアレルギー性皮膚炎や脂漏症(しろうしょう)など、慢性の皮膚疾患を持っている犬によく見られます。元々皮膚が弱い状態のところに、暖房などによる部屋の乾燥が加わると、カサカサの乾燥肌になってしまいます。そうなるとさらに皮膚病が悪化してしまい、炎症を引き起こしてしまうのです。

あるいは、皮膚病を持っていない犬でも注意が必要となることがあります。ファンヒーターなどの前で暖まったりしていると、乾燥した温風が直接皮膚に当たることで、一気に乾燥肌になってしまうことがあります。

乾燥肌は皮膚のバリア機能を低下させます。たとえ皮膚病を持っていない犬でも乾燥肌になってしまうと皮膚炎が起こり、かゆみが生じるようになりますので注意してあげましょう。

乾燥肌対策は保湿剤によるスキンケアで

このように、元々皮膚が弱い犬や乾燥肌になりやすい犬は、日常的にしっかりとしたスキンケアを実施してあげることが、冬の皮膚のトラブル対策になります。元々の皮膚病に関しては、まずきちんとした治療をしていることが大前提ですが、それに加えて保湿をしてあげるようにしましょう。

シャンプー後に保湿性の高いスキンケアローションを使ってあげたり、あるいは日頃から保湿成分の含まれたスキンケアスプレーでお手入れしてあげることで、より乾燥から皮膚を守ることができます。

また、スキンケアというと、シャンプーや保湿剤などをイメージされる方も多いのですが、実はスキンケアでそれらと同じくらい重要なのが「食事」です。特に皮膚に問題のある犬の場合、食べているドッグフードが合っていない可能性があります。そういった犬は、バランスのとれた栄養素の高いドッグフードへ変えてみると、皮膚のコンディションがずっとよくなることがほとんどです。ですので、日頃から皮膚のコンディションをチェックし、ドッグフード、あるいはサプリメントを調節してあげることは、冬場の皮膚のトラブルを予防することにつながります。

ただし栄養的なアプローチは、その効果が表れるのに最低3週間、通常は2ヶ月ほどの期間がかかりますので、かかりつけの獣医師に相談しながら、進めるようにしてください。

 

関節炎の対策と予防方法

犬も人間と同じように寒さは関節にこたえます

冬場の関節痛については、人間の高齢者でもよく見られる症状ですが、実は犬でも同じように関節炎の悪化が見られます。

寒くなると生理反応によって血管は収縮し、血液の流れが悪くなってしまいます。そうなると血液によって運ばれる酸素や栄養が筋肉にも行き渡りづらくなりますので、筋肉がいわゆる「固く」なってしまいます。

筋肉は体を曲げ伸ばしする作用はもちろん、関節にかかる衝撃を和らげる働きもあるのですが、筋肉が固くなることでその衝撃を和らげる作用も弱くなり、結果的に関節に大きな負担がかかるようになります。

また、血液の流れが悪くなると関節自体へも栄養が行き渡りづらくなりますので、やはり関節の負担も大きくなってしまいます。そうなると元々関節炎を患っている犬は、ますます関節炎が悪化してしまいます。

関節の痛みがあるときは”安静”が重要

関節炎は、足を上げたり、ひきづったり、もしくは「キャンッ」と鳴いたりなど、痛みが見られるような場合は、原因が何であれ運動を控え、安静に関節を休ませることが重要です。

重度の場合は、痛み止めなどの治療が必要になりますので、痛みが強い場合や様子を見ても改善する兆しがない場合は、動物病院を受診するようにしましょう。

関節炎を悪化させないために最も重要なのが”体重管理”

関節炎は一度慢性化してしまうと、完治することはまずありません。そのため、普段から悪化させないための対策が必要になるのですが、その対策の中で最も重要なのが「体重管理」です。

人間では、体重が1kg増えると関節への負担は3倍になると言われています。もちろんそれは犬にも当てはまりますので、関節を守るためにも肥満は厳禁、適正な体重を管理するようにしましょう。もちろん、痩せすぎている場合も筋肉量が少なくなり、結果的に関節に負担をかけることがありますので注意が必要です。

冬場の対策としては、体重管理の他、適正な筋肉を維持するための食事や運動管理も重要です。いくら体重が適正であっても、冬の寒さにかまけて運動をしないでいると筋肉が脂肪に変わってしまいます。前述しましたが、関節への負担を減らすためにも筋肉は必要ですので、しっかりと運動量を維持することも大切です。

体重管理のために食事量を減らす場合、食事内容によっては筋肉を維持するために必要なタンパク質も減ってしまう場合があります。今では、筋肉量を維持しながら減量できるドッグフードもありますので、そういったものを利用するのも良いでしょう。また、飲水量をしっかりとキープしたり、脂肪酸のサプリメントを取り入れることも、寒さで悪化する血液の流れを改善させることがでるためおすすめです。

 

排尿障害の対策と予防方法

寒くなると飲水量が減り、それが排尿障害の要因に・・・

冬の寒さによって生じる生活の変化の中に「飲水量の減少」があります。ほとんどの犬はいわゆる置き水でお水を摂取しますので、冬場はそのお水が冷たくなってしまい、積極的にお水を飲まなくなります。

ただでさえ、ドライフードを食べている犬は、食事からの水分摂取も少ないため、それがさらにお水も飲まなくなると、体が「脱水」状態になってしまいます。治療が必要なレベルの脱水を起こすことは稀ですが、軽度の脱水状態では、少しでも体の水分量を維持するために、腎臓の機能によって量が少なく濃い尿をするようになります。

通常、日常生活に異常のないレベルでは濃い尿をしても問題はありません。しかし、体質的に膀胱結石など「尿路結石症」になりやすい犬は、量の少ない濃い尿をすることで、それら結石を作りやすくなってしまいます。

膀胱や尿道に結石があると、血尿や頻尿、あるいは排尿時の痛みなど、排尿障害を引き起こします。これが、冬場に排尿障害が多くなる原因の一つと考えられています。

排尿障害は急いで動物病院へ

血尿や頻尿、排尿時の痛みなどの排尿障害が見られた場合には、なるべく早く動物病院を受診するようにしてください。中には結石が詰まってしまうケースもあり、そのような場合は命に関わる状況に陥ってしまいます。

また、結石が明らかに認められる場合は、それに合わせた療法食を取り入れてあげてください。その際に注意したいことは、療法食を食べさせるときに、療法食とお水以外のものを一切与えないようにすることです。

療法食は、結石の原因となるミネラル成分を厳密にコントロールしている食事ですので、それ以外のものも一緒に食べてしまうと、そのミネラルバランスが崩れてしまい、療法食の効果が無くなってしまいます。このことから、療法食以外のものを食べさせないようにすることが重要なのです。

そして、お水をしっかりと飲ませることも大切です。飲水量が増えればそれだけしっかりと尿が作られますので、排尿障害の進行を抑えることができます。

排尿障害の予防は”飲水量のアップ”

排尿障害が見られたとき同様、お水を飲ませることが第一です。排尿障害の予防にもなりますので、ぜひ冬場には取り入れてあげたい予防方法です。とはいえ、犬は自ら進んでお水を飲むことはほとんどありませんので、何かしらの対策をとってあげるようにしましょう。

一番手っ取り早いのは、ドライフードにお水を混ぜることです。特にふやかす必要はありませんので、食事と一緒に水分を取らせるようにしましょう。もちろんそれ以外にも、温かいお水を用意する、お水が飲める場所を増やしてあげるなどの対策も良いでしょう。

 

まとめ

冬によく見られる犬の病気は、どれも寒さやそれによる運動不足、あるいは暖房による部屋の乾燥など、冬に特徴的な環境が主な原因となります。ですので、逆にこういった環境でも、保湿剤などによるスキンケアや食事管理、運動量や飲水量を維持するといった対策を行うことで、かなり予防はできるはずです。

ご紹介したような対策は、冬だけでなく、オールシーズンで犬の体調管理をしていく上で重要なことでもあります。冬の環境をきっかけに、ぜひ健康維持や健康増進といった視点で、様々な対策方法を取り入れてみてください。

©森のいぬねこ病院