お腹がゆるいワンちゃんへの
新しいアプローチ
~消化器アレルギーについて~

お腹がゆるいワンちゃんへの
新しいアプローチ

~消化器アレルギーについて~

なかなか治らないワンちゃんの下痢それはもしかしたら「消化器アレルギー」かもしれません。

動物病院に来院する理由TOP3に入るものに「下痢」があります。しかしほとんどは一時的ないわゆる腹壊しで、短期間の治療で改善してしまいます。でも中には通常の治療では反応しない下痢や、いつまでたっても良くならない慢性化した下痢もあります。

そういった慢性の下痢では、一定のアプローチを行って治療をしても改善しない場合、ほとんどが全身麻酔での内視鏡検査や試験開腹が必要になってしまいます。もちろんこれらの検査は非常に重要なのですが、やはり全身麻酔となると多少なりともリスクが生じてしまい、特に慢性下痢で体調が芳しくないワンちゃんに実施する検査としては決して気軽に行えるものではありません(もちろん必要であれば森のいぬねこ病院でも実施しています)。

しかし、ここ最近では「消化器アレルギー」という概念ができつつあり、従来、内視鏡検査や試験開腹が必要だった下痢に対し、アレルギー検査を行うことで、それらの負担の大きい検査を回避した上で治療を行えるようになってきました。

消化器アレルギー”というのは、簡単に言うと、”食物アレルギー”が食事が原因で皮膚に病変が表れるのに対し、食事中のアレルギー物質が原因で消化器症状(下痢)が表れてしまうアレルギー疾患のことです。ですので、消化器アレルギーの診断は、食物アレルギーと同じように血液検査でのアレルギー検査で診断ができます。

また中には、以前から慢性の下痢に対して、アレルギー検査を行って治療を試みているところもありますが、私の経験では、アレルギー検査といってもアレルゲン特異的IgE検査だけを行い、もう一つのアレルギー検査であるリンパ球反応検査を行っていないケースが多いように感じています。

たとえば、1年近く下痢が続き、ほかの病院さんで治療を続けていたにも関わらず良くならなかったワンちゃんのケースをご紹介します。このワンちゃんはこれまでの病院さんで、下痢止め、整腸剤、抗生物質、駆虫剤、低脂肪食、高繊維食など、一般的な慢性下痢の治療を続けていましたが、なかなか改善しなかったとのこと。そこで森のいぬねこ病院でアレルギー検査を実施しました。

右図はそのワンちゃんのアレルゲン特異的IgE検査とリンパ球反応検査です。IgEだけ見ていると、食べ物にはまったく反応していませんので、「消化器アレルギーはなし」という診断になります。しかしリンパ球反応検査では、小麦、ジャガイモ、米に反応していますので「消化器アレルギーの疑いあり」という診断になります。

そこでこのワンちゃんは、そのリンパ球反応検査でひっかかった食材を含まないフードに切り替えたのですが、切り替えて半月ほどで下痢はなくなり、今現在は切り替えたフードのみで、薬を一切使わなくても下痢の再発はありません。

  • □ 下痢が治まらない
  • □ 治療すれば治まるけど、しょっちゅう下痢をしている
  • □ 下痢とまではいかないけど、よく軟便になる
  • □ うんちの量が非常に多い(食べたフード以上の量が出ている)

こんな場合は、通常の下痢のアプローチに加えて、アレルギー検査を実施することで改善できるかもしれません。もし気になることがありましたら、どうかお気軽にご連絡ください。

©森のいぬねこ病院