スタッフブログ

2023年12月09日  

投稿者:森のいぬねこ病院 スタッフ

膵臓の病気③糖尿病その3

こんにちは!芋沢院の榎原です☀️

 

子供3人で大学無償化のニュースを聞いて

喜んでいる方の人間です😁

欲を言えば過去の奨学金の減額をしてほしいくらいですが🤣

 

でも3人はハードルが高いっていう批判もありますね。

みなさんはどう思いましたか?

 

さて、いよいよ糖尿病のお話も佳境ですね。

次はいよいよ治療編です!

治療も大変な情報量なので、

専門的なところはなるべく省くか、

簡単な言葉で解説していきたいと思います😅


糖尿病

糖尿病の治療目的

治療法の説明に入る前に

糖尿病治療のゴールについて説明しなければなりません。

 

糖尿病治療の目的は

血糖値の正常化=完治

ではありません

 

人のように、厳密な正常範囲を目指すことはせず

臨床症状や、合併症の悪化を起こさない範囲に、血糖値を保つこと

が目的となります。

そのため、治療は一生涯に渡り続くことが多いことを

理解しておかなければなりません。

 

治療法

これは言わないでもわかる方が

多いと思います。

とにもかくにもインスリンの注射ですね。

 

人では、食事管理や運動療法などで

初期の2型糖尿病は管理ができるようですが

犬猫の糖尿病はそのほとんどが

発見時にはインスリンが全然存在しないか

機能していないため、

インスリン注射による治療が必要となります。

 

もちろん、インスリン以外の食事療法や

運動療法

併発疾患なんかもとても大事な治療ですので

同時に取り組むことになりますが、

やはり治療の主力はインスリンです。

ここからは、

①インスリン療法

②食事療法やその他の糖尿病治療

③併発・原因疾患の治療

にわけて解説していきます。

 

①インスリン治療

糖尿病であることがわかったら、いきなりインスリン治療!

といきたいところですが

なかなかそうもいきません😅

もちろん治療にはインスリン治療が必要です。

しかし、

インスリン注射には様々な乗り越えるべき壁

が存在しますので、それらを確実にクリアして

長期的な管理ができるように

飼い主様と病院が協力して、

目標に向けたトレーニングをしていくことが必要です。

壁1)インスリン初回投与時の入院

一般的な状態が良く、血液検査上で

血糖値の上昇以外の問題があまりないのであれば

良いですが

インスリン治療をしていない患者では、

前回の症状編で解説したような

糖尿病性ケトアシドーシスや、

高浸透圧高血糖症候群

になっている場合があります。

その状態で即座にインスリン治療を開始すると、

逆に危険となります。

 

なので初期には、輸液治療をメインとした治療を開始し、

状態が安定してからインスリンをスタートします。

その際、当然ながら副作用や血糖値の変化をしっかりと

観察するため、入院治療が絶対に必要です

 

また、そのような状態でないとしても

インスリン治療の初期には

血糖値の急激な低下を避けるために

半日から数日の入院で、

血糖値の変化をモニタリングすることが推奨されます。

 

壁2)入院や治療によるストレス

入院をしたことがない子がいきなり入院となると

ストレスがかかり、普段の生活よりも

血糖値が下がりにくくなったり

逆に食事を取らなくなることで血糖が下がりすぎる心配があります。

特に猫ちゃんでは、早期に自宅でのインスリン管理に切り替える

ことになります。

 

壁3)インスリンの作用は個体差がある!

これがかなり面倒なポイントなのですが

インスリン治療を開始すればすぐ良くなる。

と思いきやそうではないことも多いです

血糖値がインスリンにより下がりすぎたり

逆に思ったよりも下がらなかったりと

最初のうちはこまめに血糖値を測り、

理想的な投与量を決定する必要があります。

 

入院中に完璧となることは大抵はできないため、

安全な初期量を決定したら、

その後は自宅にて血糖値の計測尿糖のチェック

をすることが望まれます。

 

壁4)自宅での投与できるか問題

これが飼い主様にとっては最大の壁となります。

一生懸命入院でインスリンの量を決定しても

自宅で注射を毎日できなきゃ意味がありません😭

なので最初は確実に投薬ができるように

薬剤の準備の仕方、注射のやり方

を練習する必要があります。

 

壁5)安定するまで通院、検査、管理

最初の投与量が決定したら、ご自宅での管理に移ります。
これが最後の壁ですが、ここまできたら頑張るのみです><

インスリンの作用と血糖値の変動が安定して、

ご家族が投薬と治療のリズムに慣れるまで

最低4週間から6週間の間は

1〜2週ごとの通院が必要となります。

この間、できるだけ安全・確実に

インスリンの作用をチェックするために

可能な限りご家族の方にも

・血糖値の測定(血糖測定器を利用する)

・尿糖のチェック

・食欲、体重のチェック

・低血糖症状がないかのチェック

をしていただくことになります。

 

無理のない範囲で治療を継続するために

これらを病院と相談し、どのように行うか

決めていくことが大事ですね!

 

*インスリン治療では様々な種類があるインスリンから
適切なものを選ぶことや、血糖値の変化に合わせたインスリン注射量
の調節を行います。
これらの調節・選択に関しては難しいお話ですので割愛いたします🙇‍♂️
病院のスタッフに任せましょう笑

 

②食事療法やその他の治療

犬でも猫でも、食事管理は重要です。

しかし犬と猫では、食性が違うので

一緒の管理方法ではありません

 

食事の種類に関して

犬では体重管理用のダイエット食、高繊維食

がチョイスされます。

猫では、高タンパク・低炭水化物の食事が

糖尿病の管理には好ましいとされていますが、

犬よりも猫の方が食が好みに左右されやすいため、

まずは猫が好むものを優先的にチョイスします。

その上で、併発疾患なども加味して

糖尿病用の食事が良いか、他の食事が良いかを検討します。

 

食事の与え方に関しても違いがあります。

犬では生活のリズムを一定にすること

(1日2回の食事、適度な運動、インスリン注射)

が大事ですが、

猫では基本猫さんまかせの生活リズムになります。

いわゆる猫食い(ちょこちょこ食べる)でも構いません。

インスリンの注射をそれに合わせて、無理のない管理を

行う方が好まれます。

 

その他の薬物療法について

また、インスリン以外の薬物治療が行われることもあります。

内服により食後の急激な高血糖を避ける目的や

治療率としては高くないですが

猫で人の2型糖尿病の治療薬が効果を示すことも

あるようです。

 

漢方薬も、糖尿病の臨床症状の緩和目的で用いることも

ありますが、犬ではやはりインスリンが絶対必要なケース

が多いので、

どの薬剤もインスリンの代わりとすることは

できないと思った方が良いでしょう😣

 

補助的治療もしくは注射ができない時の第2策ですね><

 

*運動療法は?

犬や猫では運動療法は難しいだけでなく、血糖値の

変化が大きくなるため勧められません。

適度な運動で筋肉量を維持する、QOLを保つくらいのものに留めましょう。

 

③併発・原因疾患の治療

時にこちらの治療がかなり重要な割合を占めます。

特にケトアシドーシスや高浸透圧高血糖症候群に

陥ってしまった場合

そうなったきっかけとなる基礎疾患が存在する

ことが多いので

入院期間中に必ず精査と診断をして治療に入ります。

 

また、原因疾患によっては

そちらの治療を行うことで

糖尿病が治ることがあります。

 

無駄なインスリン治療を続けることがないよう、

インスリンの反応が思った以上に悪い時には

原因疾患の見逃しがないか探ることも

大事ですね。

 

細かい疾患の解説は省きますが

糖尿病の原因となる疾患には

・クッシング症候群

・甲状腺機能低下症

・猫の先端肥大症

・膵炎

・妊娠や発情後のホルモン分泌

・血糖上昇ホルモンを産生する腫瘍

などがあります。

 

まとめ

・糖尿病治療はとにかくインスリン

・自宅での長期管理をするために病院と連携してトレーニングをしましょう。

・食事管理も大事。犬ではダイエット猫では好みに合わせる

・内服薬の治療法もあるけどインスリンの代わりにはなりません

原因疾患の発見と治療ができれば治ることもあるので必ず調べよう。

 


 

ようやく長い糖尿病についてのお話が終わりました!!

難しい内容ですが、飼い主様があとで見直して

こういうものなのか🤔

と思っていただけるように

大事なことを書いておいたつもりです!

 

書く方も読む方も疲れると思うので、

次回以降はしばらく気楽な内容にしようと思います。。笑

©森のいぬねこ病院