こんにちは!芋沢院の榎原です☀️
本日は寒かったので朝起きたくなかったです😅
今年はだいぶ遅めの冬ですね〜
まだ日中は暖かくて
アレルゲンの草花が枯れずに憎いですね😩
さて本日は久々に少し医学的なお話のご紹介です💡
猫の腎臓リンパ腫
皆さんはリンパ腫はご存知でしょうか?
犬ではゴールデンレトリーバーで多いとされるリンパ腫ですが
猫ちゃんでは腫瘍の中で最も多いものです。
診療をしていて、よく遭遇します。
リンパ腫は全身のどの臓器・場所にも発生するものなのですが
その中でも腎臓にできたものは
ちょっと特徴的でして、不思議でしたので
今回取り上げてみようと思いました!
腎臓について
腎臓という臓器については知らない方は少ない
かと思いますが、簡単にご説明いたします。
腎臓は、お腹の中で、背中の筋肉にくっつくような位置に
左右一対存在する、空豆のような形をしている臓器です。
腎臓の最も大事な機能は尿を作ることです。
全身をめぐる血液から老廃物や不要物質をこし出し、
尿として体外へ排泄します。
他にも
・赤血球を作るホルモンを分泌
・血圧の調節
なんかにも関与しています。
リンパ腫について
次にリンパ腫というものは知らない方も多いと思うので
軽く解説いたします。
リンパ腫というのは、血液中の細胞成分である
白血球
のうち、
リンパ球
がどこかの臓器に塊状、あるいはびまん性に増殖したものです。
正常なリンパ球は免疫機能を持ち
体外から来た病原体と戦ったり、
腫瘍細胞などの異常細胞と戦う機能を持ちますが
腫瘍化したリンパ球はこのような機能を持たないか
弱いため、正常な細胞にとっては
ただただ迷惑な存在となっていきます😅
リンパ腫は、全身どの臓器にも発生すると
言いましたが
できる場所により、
消化器型リンパ腫、胸腺型リンパ腫、多中心性リンパ腫、腎臓型リンパ腫
などと区別されて呼ばれます。
また、できる臓器により発生する症状は異なります。
共通する症状としては
・食欲不振
・元気消失
・発熱
などが挙げられますが
初期にはこれらの症状すら示さないこともあるので
診断は画像検査にて腫瘍そのものを発見するまで
わからないことが多いです。
腎臓のリンパ腫についても同様で、
最初期には特徴的な症状を示さず
ほとんどが食欲不振や嘔吐などの
一般的な症状で来院されます。
腎臓リンパ腫の特徴について
特徴的な症状を示さない
と申しましたが
画像診断を行うと、腎臓に発生したリンパ腫は
比較的わかりやすいことが多いです。
これが不思議な点で特徴的なところなのですが、
なぜか腎臓のリンパ腫は両側の腎臓に同時発生します。
全てではないのですが
なんで離れた左右の腎臓に同時に発生するのでしょうか。。。
なので、両側の腎臓が同時にボコボコに大きくなっていれば
腎臓リンパ腫の疑いが高くなります。
(後で画像をお見せします)
続いて腎臓の正常な領域を腫瘍が破壊するため、
腎臓の機能障害、つまりは腎臓病になっていきます。
そのため多飲多尿や脱水などの
腎臓病の症状や、腎臓検査数値の上昇
が発生し、発見されることもあります。
さらに特徴的なポイントがあります。
それは、腎臓のリンパ腫は神経へ転移しやすい
ということです。
なので、神経症状(麻痺)や腰(脊髄)の痛み
が認められることがあります。
診断
腎臓のリンパ腫はその特徴から、両側の腎臓が
大きくなっていることが多いため
まずはこれをレントゲンで見つけます。
画像)左右の腎臓の腫大
続いて腎臓の構造を確認するために
腹部超音波検査を行います。
画像)両側の腎臓の腫大と形の不整
ここで腫瘍を疑うようでしたら
最終的には
腎臓へ針を刺し、細胞を採取する細胞診検査
を行い、腫瘍細胞が採取されてくれば確定診断となります。
治療
治療については、片方のみの腎臓に発生した腫瘍であれば
切除が選択肢に入りますが
両側にできてしまった場合、
化学療法(抗癌剤)しか手はありません。
リンパ腫は他の腫瘍に比べ、
化学療法への反応が良いため、
生存期間の延長や腫瘍細胞の消失
といった希望が持てるため
比較的他の腫瘍よりも抗癌剤を積極的に
行うことが多いです。
しかし、腎臓にできたリンパ腫は予後が悪く、
化学療法を行ったとしても平均生存期間は約3ヶ月であり、
なんらかの反応が認められる割合自体も75%程度と低いです。
ですので化学療法を行うかどうかは
最終的には飼い主様としっかり相談して決めることになります。
まとめ
・腎臓のリンパ腫は、左右両方の腎臓に同時に発生することが多い
・症状は食欲不振など一般的な症状+腎臓病の症状±神経症状がある
・レントゲンやエコー検査で見つかる
・針細胞診検査で確定診断が可能
・治療は抗癌剤治療が主
・予後は悪いが治療により生存期間の延長は期待される
本日はちょっと暗い話になってしまいました😢
こういう話は実際自分の身におこって初めて読まれる
と思いますが
少しでも誰かの参考になれば幸いです。
また、治療を選択する際には
抗癌剤が絶対正しい治療とは限りませんので、
しっかりとメリット・デメリット・リスクを検討した上で
後悔のない選択をしていただきたいなと思います。