2017年06月05日  

<猫が副鼻腔炎を発症する原因は?症状悪化を防ぐ予防法と主な治療法>

こんにちは!!
今回は『猫の副鼻腔炎』についてお伝えします。
本記事は、過去に私が寄稿したものを許可を得て転載しています。
無断での引用、転載は禁止しておりますので、ご了承ください。



■ 副鼻腔炎とは?
人間も含め、動物には鼻腔の奥にさらに副鼻腔と呼ばれる空洞があります。猫ではこの副鼻腔に炎症を起こすことが多く、副鼻腔炎と呼ばれています。この副鼻腔は一度炎症が起こると、お薬が届きづらく、また外科処置も難しい場所ということもあり、慢性化しやすく、場合によってはその治療が一生涯にわたる、あるいは完治せず後遺症が残ってしまうケースもあります。

■ 副鼻腔炎の原因
猫 数匹副鼻腔炎のほとんどが、鼻炎による炎症が副鼻腔にまで達してしまうことで引き起こされます。その要因としては、若い猫やワクチンを打っていない猫では、ネコヘルペスウイルス1型やネコカリシウイルスといった伝染性のウイルス病による急性鼻炎が非常に多いと言われています。また、まれにクラミジアによる鼻炎から副鼻腔炎を発症するケースもあります。これらの感染症は、病原体を持った猫から感染するため、外に出る猫や複数の猫と暮らしている場合、病気にかかるリスクが高くなります。さらに、副鼻腔炎の場合、これらの感染症に加えて、細菌感染など複数の原因が重なって発症していることも多いと考えられています。
一方、年を取った猫では、若いころにかかったウイルス性鼻炎が慢性化してしまったケースのほかに、腫瘍(がん)による副鼻腔炎の発症もあります。
さらに副鼻腔炎の中には、はっきりとした原因が特定できない「特発性副鼻腔炎」と呼ばれるものもあります。また、人間では主な原因となるアレルギー性鼻炎は、猫では非常にまれな病気だと考えられています。

■ 副鼻腔炎の症状猫 鼻 アップ
くしゃみ、鼻水、鼻づまりといった鼻炎の症状がみられます。さらに重度の場合は鼻血がでることもあります。また、猫の場合は副鼻腔炎によってにおいが嗅げなくなると、食欲を無くしてしまうこともあります。
また、がんの場合は、顔の変形がみられることもあります。

 

 

■ 副鼻腔炎の予防

Cat is having vaccination on the table at the veterinarian

上記、副鼻腔炎の原因の中でも、ウイルス性やクラミジアによる鼻炎は、予防することができます。
ネコヘルペスウイルス1型、ネコカリシウイルス、ネコクラミジアはワクチンがありますので、幼い猫やワクチン未接種猫は1か月ごとに複数回(何回打つかは時期やタイミングによって異なります)、ワクチン接種済みの猫は年に1回の追加接種を行うことでこれらから発症する鼻炎、副鼻腔炎を予防することができます。
また、ウイルスをもらわないよう、屋内飼育を心がける、外から新しい猫を迎えるときは、しばらくの間別々に生活させる、といった工夫で、病原体を持っている猫との接触を避け、感染リスクを減らすこともできます。

■ 副鼻腔炎の治療
副鼻腔炎の治療は、その原因により異なります。まずウイルス感染に対しては、まだ有効な抗ウイルス薬が存在しないため特効薬はなく、インターフェロンといった免疫を高める治療や炎症を抑える対症療法を行います。また、猫の体が弱ったところに新たな感染が起こらないように、抗生物質を投与することもあります。これらウイルス感染は重症化することがあるため、そのような場合は入院治療が必要になることがあります。
治療の効き目が表れだした場合、7~10日ほどで症状は改善していきますが、副鼻腔炎の慢性化を防ぐために、数か月間は抗生物質などの治療を継続することもあります。
クラミジアや細菌感染では、その原因菌に合わせた抗生物質を投与します。通常、抗生物質による治療は長期間に及ぶため、培養検査と感受性検査という原因菌およびそれに有効な抗生物質を特定する検査を実施した上で、治療を行うことが大切です。
また、がんの場合は、ほとんどが手術による完全切除が解剖学的に難しいため、抗がん剤治療、放射線治療といった治療を組み合わせて実施することがほとんどです。近年は大学病院などでは動注化学療法といった、より抗がん剤の副作用を抑えた治療法も実施されています。

■ まとめ
猫の副鼻腔炎は慢性化すると非常に治療がやっかいな病気です。そのため日ごろからの予防や、鼻炎症状がみられた場合の早期発見と早期治療が大切なポイントになります。特に外にでる猫は感染のリスクがとても高いので、ワクチン接種は積極的に行うことをお勧めします。

©森のいぬねこ病院