こんにちは!!
今回は『犬の尿毒症』についてお伝えします。
なお、本記事は過去に私が寄稿したコンテンツを、許可を得て掲載しておりますので、本文及び画像の無断での引用、転載を禁止させていただきます。
■ 尿毒症とは
尿毒症とは、体内の代謝で生じた老廃物が、体の外に排泄されずに溜まってしまうことで生じる、様々な症状のことを言います。尿毒症は放っておくと命に関わる状態にも陥りますので、少しでも「怪しいな」と感じたら、すぐにでも動物病院を受診する必要があります。
■尿毒症の原因
少し専門的な内容になってしまいますが、普段の食事などで体に取り込まれたたんぱく質は、様々な代謝経路を通って分解され体内に取り込まれていきます。そのときに生じる「非タンパク性窒素化合物」という物質は、通常、腎臓を通って尿と一緒に体外へ排出されます。しかし、この過程に何らかの異常が生じると、非タンパク性窒素化合物が体内に蓄積され、体の中で様々な悪影響を起こし、尿毒症の原因となります。
では非タンパク性窒素化合物が体に溜まってしまう原因を見てみましょう。
原因は大きく分けて次の3つが考えられます。
1. 非タンパク性窒素化合物が過剰に作られてしまう
2. 腎臓の機能低下によって、非タンパク性窒素化合物の排泄が上手くいかず、体内に溜まってしまう
3. 一度、尿に排出された非タンパク性窒素化合物が、再度体内に吸収されてしまう
1. 非タンパク性窒素化合物が過剰に作られてしまう
外傷や発熱、熱傷などによって、体に過剰な炎症反応が起こると、それに反応して様々なタンパク質が炎症反応に動員されます。(異化亢進 ”いかこうしん” と言います)。この炎症反応がなかなか治まらずに持続してしまうと、異化亢進状態が続き、タンパク質が過剰に作られてしまいます。タンパク質が過剰に作られると、その代謝で生じる非タンパク性窒素化合物も過剰に作られるため、尿毒症を発症するようになります。
2. 腎臓の機能低下によって、非タンパク性窒素化合物の排泄が上手くいかず、体内に溜まってしまう
腎臓は非タンパク性窒素化合物をはじめ、体内の老廃物をこしとり 、尿として体外に排泄させる機能を持っています。その腎臓の機能が低下すると、当然老廃物が体内に蓄積しますので、やがて尿毒症を発症するようになります。腎機能の低下には、急速に病状が進行してしまう「急性」のものと、徐々に病気が進行する「慢性」のものがあります。急性の腎機能低下は、病気の進行とともに症状もどんどん重くなってしまいますので、早急な治療が必要になります。一方、慢性の腎機能低下は、初期症状には気づきづらく、ある程度病気が進行した状態で発見されることがほとんどです。発見時には症状も進んでいることも多く、また腎機能も再生しないため、注意が必要です。
3. 一度、尿に排出された非タンパク性窒素化合物が、再び体内に吸収されてしまう
腎臓で作られた尿は、尿管→膀胱→尿道という経路を通って体外に排泄されます。しかし、この経路のいずれかで尿の漏れがあると、尿は再度体に吸収されてしまいます。当然、尿にはたくさんの非タンパク性窒素化合物が含まれていますので、それらとともに再吸収されてしまい、そして尿毒症を発症してしまいます。
尿の漏れとしてもっとも多いのは、交通事故などの外傷によって、尿路のいずれかが破れてしまうものです。またそれ以外にも尿路結石症で尿路が閉塞した場合にも、急性の腎機能低下はもちろん、尿が溜まりすぎて尿路を破裂させてしまうこともあります。
以上、尿毒症の原因をお伝えしましたが、ここで重要なのは、いずれの原因にしても病状としてはかなり深刻で、どれも命に関わる危険があるということです。ですので、どんな原因であれ、尿毒症が疑われるときは、決して様子を見るのではなく、すぐに動物病院を受診するようにしてください。
■ 尿毒症の予防法
そんな恐ろしい尿毒症ですが、残念ながら確実に予防できる方法はありません。しかし、尿路結石症や慢性の腎機能低下については、定期的な健康診断、特に尿検査で早期発見することは可能です。特に年を取ってくると腎臓の機能が低下する犬は増えてきますので、高齢の犬はこまめな定期健診を受けるようにしましょう。
また、体の異化亢進状態を引き起こす外傷や発熱などは、元気や食欲の低下も引き越しますので、これらの症状を見かけた場合は、様子を見るのではなく、なるべく早めに動物病院を受診するようにしましょう。
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