こんにちは!!
こんにちは!!
今回は『犬の熱中症』についてお伝えします。
本記事は、過去に私が寄稿したものを許可を得て転載しています。
無断での引用、転載は禁止しておりますので、ご了承ください。
※「え?この時期に熱中症の話???」と思われるかもしれませんが、春先や秋口の方が、飼い主の方が油断するのか、暖かい日に車で待たせたりして、熱中症を起こしてしまうことがよくあります。そこで注意喚起的な意味も込めて、この時期に会えて熱中症についての記事をアップさせていただきました。
熱中症は、体に熱がこもり高体温になることで、様々な重い症状を引き起こし、時には命の危険に及ぶことがある非常に恐ろしい症状です。
外気温が高くなったり、地面からの放射熱が強い時、人間であれば汗をかくことで、体温を調整し、ある程度熱中症を防ぐことができます。しかし、犬の場合は人間のように汗をかくことができず、体にこもった熱を逃がすことが得意ではありません(反面、保温には優れているので、寒さには強い犬種が多いです)。
そのため、犬は人間よりも熱中症にかかりやすく、人間が「これくらいの暑さなら我慢できるかな」という状況でも、犬にとっては熱中症を引き起こしてしまうことがあるので注意が必要です。
■熱中症になる犬の特徴
犬という動物自体が人間に比べて熱中症にかかりやすいのですが、犬の中でも下記の特徴の犬に多く見られる傾向があります。
・老犬や幼犬
・短頭種とよばれるグループ
(ブルドック、パグ、シーズー、ボストンテリアなどの頭蓋骨に比べ、口元の長さが極めて短い犬種のグループ)
・脱水症状のある犬
・心臓などの循環器や気管・肺といった呼吸器の病気にかかっている犬
(熱中症によって病態が悪化してしまうことが多いため、特に注意しなければなりません)
循環器や呼吸器に病気を持つ犬が、熱中症により重症化しやすい理由は、犬は汗で体温調節できない代わりに、呼吸によって体の熱を外に逃がしていることにあります。つまり、暑くなると犬は口を開けて舌を出し、「ハアハア」という呼吸をすることで、体の中に溜まっている熱を呼吸によって外に出します。これにより呼吸器に大きな負担がかかるのです。
さらには暑さによって血圧も変化しますので、循環器にも強い負担が生じます。循環器や呼吸器の病気になると、その暑さを逃がすための呼吸や血圧の変動自体が大きな負担になってしまい、病気をより重いものにしてしまうのです。
■熱中症の症状
熱中症にかかると、高体温、パンティング(「ハアハア」と激しい呼吸の様子)、元気食欲の低下、過剰なよだれ、心拍数の増加、結膜の充血などが認められます。さらに重症になると、吐血や下血、不整脈などが見られ、けいれん発作やショックを起こし、死に至ることもあります。
犬の正常体温は、おおよそ38℃台です。そして39℃後半になると明らかな発熱があると判断します。そして熱中症では41℃を超える発熱を起こすこともまれにあり、より体に大きな負担がかかります。そして42.7℃を越すと多臓器にわたる障害が引き起こされ、非常に厳しい状況になってしまいます。
■熱中症の原因
熱中症は、外気温が高い場所にいることで発症します。実際に動物病院に熱中症で来院された中に以下の特徴が多く見られます。
・夏場の日中、エアコンのない部屋での留守番
・暑い時間帯のお散歩
・車の中での留守番
特に梅雨の後半の時期や残暑の頃、真夏ほどピークではない暑さの時期に、ついつい油断をして、温度管理をせずにいることで、熱中症を発症してしまうこともあります。また、夏場の夕方の外気温が下がった頃でも、地面からの放射熱が強い時にお散歩に出てしまうと、熱中症にかかってしまうことがあります。さらに、車でのお留守番は、たとえエアコンをしっかりかけていても、直射日光のせいで熱中症(熱射病)にかかることがあります。
また、老犬や幼犬、短頭種、循環器や呼吸器に異常を持つ犬では、人間が「これくらいは大丈夫かな」と思えるような暑さでも、容易に熱中症を発症するため、細心の注意が必要です。
■日ごろからできる熱中症の予防及び病院での治療法
このように、一度熱中症にかかると非常に危険な状態に陥りますので、とにかく熱中症にかからないよう予防してあげることが最も重要です。
夏場だけでなく梅雨時期や残暑が残るような初秋の時期にも、部屋ではエアコンなどで「多少涼しいかな」というくらいの温度設定にしたり、十分な風通しを確保するようにしましょう。そして、車のお留守番は、たとえエアコンを効かせていても、絶対にしてはいけません。また、お散歩をするときは、涼しい時間帯にすることはもちろん、お散歩の前に地面に直接手を触れて、地面も十分に冷えていることを確認してから出発するようにしましょう。
老犬や幼犬、短頭種、循環器や呼吸器の持病を持っている犬の中には、夏場以外でも、興奮して体温が上がっているときに、シャンプーしたりドライヤーをかけたりするだけで熱中症を発症してしまうことがあります。熱中症の危険性があることを念頭に、様子を見ながら行ってあげるようにしてください。
熱中症にかかってしまった、あるいは熱中症が疑われる場合には、とにかく急いで動物病院を受診するようにしましょう。熱中症は初期治療が遅れるほど、命にかかわる確率も高くなってしまいます。
動物病院では、熱中症と診断された時には、水や冷却パッドなどで体を冷やしながら、酸素吸入、輸液を行います。しかし、体を冷やしすぎたり、輸液が過剰にならないよう、心拍数や血圧などのモニターを注意深く実施しながら治療を進めていきます。さらに肺水腫や急性腎不全など、熱中症からの併発症がないかどうかを調べるための検査を実施し、それらが見られた場合には、併発疾患に合わせての治療も実施します。
自宅で体を冷やす時には、お水や濡れタオルなどを使って扇風機、ドライヤーの冷風を体に当てるようにしてください。しかし、この時も体温が下がりすぎると逆に危険になるので、体温をチェックは重要です。また、氷は使わないようにしましょう。温度が低すぎると、血管を収縮させたり、体が震えてしまい、逆に病態を悪化させてしまうことがあります。
■まとめ
熱中症は、特に老犬や幼犬、短頭種での発症が多く、心臓や気管などの循環器、呼吸器系に病気を持っている犬では、軽い熱中症でも重症化してしまいます。
熱中症の多くは、日常生活の温度管理で予防することが可能ですが、ちょっとした油断で発症しまうことがほとんどです。夏場はもちろん、その前後の時期でも、ちょっとした暑さを感じたら、早めに温度対策を行ってあげてください。また、夏場だけでなく、涼しい時期でも直射日光による熱中症を起こすことがありますので、車での留守番は、たとえ短時間でも避けてください。
少しでも熱中症を疑う症状がみられた場合には、速やかに動物病院を受診するようにしましょう。
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