スタッフブログ

2023年11月10日  

投稿者:森のいぬねこ病院 スタッフ

猫の下部尿路疾患

こんにちは!芋沢院の榎原です☀️

 

急に寒くなりました🥶

芋沢の冬は雪が多く降る時があるので

いまからドキドキです。

 

さて、寒くなると増える病気があります。

代表的なものが膀胱炎や尿道閉塞などの

猫の下部尿路疾患です。

 

今日はこの疾患について

ご紹介しようと思います💡


猫の下部尿路疾患とは🚽

泌尿器(尿路)のうち、

・膀胱

・尿道

に起きたトラブルをまとめて示した

名称です。

この疾患の特徴としては

膀胱炎が起こることにあります。

 

原因

・細菌感染

・尿石症

・ストレス

・腫瘍

・外傷

・医原性(薬や、カテーテル操作)

・原因不明(特発性)

が挙げられます。これらの要因が

単独か、重なって存在することがあります。

このうち、最も多い原因は特発性です。

 

ロイヤルカナン HPより引用

また、直接的ではなくとも、

なりやすくする要因としては

・寒くなったことによる飲水量の低下

・フードの変更や環境の変化などストレス

・トイレが汚れている、少ない

・水飲み場が少ない

・多頭飼い

・肥満

・去勢オス

・皮膚疾患

・免疫力低下を起こす基礎疾患

・奇形

などが挙げられます。

 

症状

下部尿路疾患で見られる症状は

・何度もトイレに行くが、出ない

・トイレではないところに何度も排尿する

・血尿が出る

・いつもより尿がキラキラしている

・トイレで鳴く(変な声でとか、悲しそうな声で)

・食欲の低下

・嘔吐

・下痢(おしっこと一緒に何度も排便するうちに緩くなる)

・元気がなく、ぐったりする

といったものになります。

 

何度もトイレに行く様子を、

「便秘のようだ」

と言われるケースもあります。

が、実際はおしっこが出てないというオチですね。

このうち、嘔吐や食欲不振、ぐったりした様子がみられたら

尿道閉塞を起こしている可能性があるので

非常に危険です。

このような状態には男の子でなりやすく

女の子ではなりにくいです。

 

病気の起こるメカニズムと悪化のプロセス

①幾つかの病気になりやすい要因がある

・ミネラルの多い食事や不衛生な環境、肥満など

②原因となる大きな問題が発生

・急激なストレス、脱水など

③膀胱の炎症と痛みが生じる

→この時点で膀胱炎を発症。臨床症状が出始める

 

④尿道へ炎症物質や石が詰まる

尿道閉塞。重症化。

⑤尿道が炎症を起こし腫れる

更なる悪化を招く。閉塞が複雑になり、開通しづらい状態へ。

⑥排尿ができなくなる

嘔吐や食欲不振が出始める

⑦膀胱がパンパンになり腎臓へダメージが及ぶ

ここからは、24時間以内に急激に進行します。

⑧膀胱の障害が重度に・腎不全になる

24時間を超えて膀胱がパンパンですと、

膀胱の壊死や神経障害を引き起こします。

⑨問題が改善されなければ死へ至る

膀胱破裂や腎不全が回復不能な状態となります。

 

 

猫の膀胱炎の特徴

猫はストレスにより膀胱で炎症を引き起こす物質が

産生されることがわかっています。

また、膀胱炎そのものによる痛みが更なるストレスとなり

さらに自発的な炎症を引き起こすという悪循環が成立します。

診断と検査

症状により下部尿路疾患を疑ったら、

その原因と状態の確認を急ぎます。

先ほど示した悪化のメカニズムのどの位置にいるかによって

重症度・緊急度が変化します。

 

私は、嘔吐や食欲不振がなく膀胱が張っていなければ

レントゲン超音波検査をまず行い、可能であれば尿検査を実施します。

膀胱炎症状で尿を出し切ってしまっていると

膀胱内におしっこが溜まっておらず、尿検査ができないこともありますが

その場合はレントゲンと超音波検査の結果で原因を推測し、

治療を加えたのちに尿検査をできるタイミングで行います。

*尿を自宅で取る練習をしておくといざと言う時役立ちます!

 

もしも嘔吐があったり、食欲不振や元気なくぐったり

といった症状が認められる場合には、必ず血液検査を実施します。

また、膀胱がパンパンに張っている場合には

命の危険が高まっていると考えられるので、

できるだけ積極的な検査と治療のお話をしてから先へ進みます。

この時、本人の痛みやストレスは相当なものとなっており、

気が立っている子もいますので

場合によっては検査をするにも麻酔が必要となります。

 

治療

尿道閉塞のない単純な膀胱炎の治療は、十分な水分補給

痛み・ストレスの管理がメインになります。

原因がなんであれ、ストレスや痛みは

膀胱炎症状を悪化させたり、長引かせる原因となりますので

必ず対応を行います。

また、初日は点滴を行い

薄い尿を作らせ、その後は自宅でしっかりと飲水を促せるように

食事指導・生活指導を行います。

 

↑尿石症の治療に使用する療法食の例

 

抗生物質や、食事の変更の必要性は尿検査の結果を元に判断します。

細菌感染が認められない場合には抗生物質の処方はしません。

また、血尿が見られても止血剤は使用していません。

鎮痛剤のみ処方するケースが多いです。

 

*稀なケースで、外傷や腫瘍が原因の場合には、外科治療が必要となる場合もあります。
検査結果に応じて都度、治療方針の相談を追加します。

 

予防・対策

↑猫のストレスが少ないお部屋

治療と同時に、再発防止にむけた生活指導を行います。

ポイントとしては、膀胱炎になりやすい要因をなくし、

ストレスとなる要因を見つけて排除することです。

特に大事な点としてみなさんに、

 

水飲み場の増設

→猫の頭数×2+2

トイレの増設、整備

→猫の数×2

遊びの確保

→キャットタワーなどの設置

リラックスできる場所の確保

→大きな窓があって、通りに面していると、

人がしょっちゅう通るためストレスになる。

窓は猫が自分の意思で登ったところから見える位置にあると良い。

・食事、サプリによるストレスケア

CLT、フェリウェイ、静心など

 

についてお話しし、必要であれば

 

・肥満の是正

・基礎疾患の治療

 

を行います。

 

さいごに

ストレスとなる環境や要因・実施できる対策は

ご家庭によってそれぞれ異なりますが

特に男の子の下部尿路疾患は

尿道閉塞を起こすと命に関わる

大変危険な病気です。

 

発症させないような予防対策を是非心がけましょう!

 


いかがでしたでしょうか?

猫の膀胱炎はよく遭遇する病気ですが、

正しい知識を広めることで

もっと病気にかかる子を減らせるし

重症化する前に対処できる病気だと考えています。

 

それに獣医師もどんどん知識をアップデートして

再発させない治療を心がけたいですね!

 

参考になれば幸いです☺️

©森のいぬねこ病院