2017年10月04日  

耳をかゆがるときは要注意!感染性の強い耳の病気とは

こんにちは!!
今回は『犬の疥癬症』についてお伝えします。
本記事は、過去に私が寄稿したものを許可を得て転載しています。
無断での引用、転載は禁止しておりますので、ご了承ください。





■耳疥癬とは

耳疥癬(みみかいせん)は、イヌミミヒゼンダニというダニの一種が耳に寄生することで、強いかゆみを伴った外耳炎を引き起こす病気です。イヌミミヒゼンダニの感染力は強く、またその症状も強いため、感染しないようにコントロールすることはもちろん、耳にかゆみを認める場合は、なるべく早く治療してあげることが大切です。

■耳疥癬の症状

耳疥癬にかかると、強いかゆみを伴った外耳炎を発症する他、茶褐色〜黒色の耳垢が大量にみられるようになります。直接耳を掻くことはもちろん、頭を振ったり、耳を地面や壁に擦り付けるような仕草を頻繁に行うようになります。さらには、掻きすぎで耳の外側の毛が薄くなり、傷ついてしまうこともあります。

また感染力が非常に強いため、同居犬がいる場合はその同居犬にも伝染し、同じように耳をかゆがるようになります。しかし、耳疥癬の症状は、いわゆる一般的な「外耳炎」と同じですので、症状だけでは区別がつかないことが多いです。

一昔前までは、不衛生なブリーダーやペットショップで感染することが多く、感染してしまう多くの犬は子犬でした。しかし、近年では衛生環境に配慮したところも増えて、子犬で耳疥癬を見かけることは少なくなりました。
Elo-Welpe kratzt sich hinter dem Ohr
その一方で、老犬での耳疥癬をときどき診察するようになったのですが、老犬の中には、アレルギーなどの慢性外耳炎を患っているケースもあり、子犬に比べて診断に時間がかかることもあります。

当院では慢性の皮膚炎や外耳炎でセカンドオピニオンの対応をさせていただくことが多く、その中には、以前の病院でアレルギーということで治療を続けていたが、悪化するばかりで良くならず、当院で再度検査。すると、耳疥癬を併発していた、ということが発覚することもあるので注意が必要です。

また、老犬では症状が強く出ることがあり、中には「耳血腫(じけつしゅ)」といって、耳介(じかい:耳たぶ)が内出血を起こしてパンパンに腫れ上がることもあります。

closeup pug dog having a check-up in his ear by a veterinarian

■耳疥癬の原因

耳疥癬は、すでに耳疥癬にかかっている犬と接触することにより感染します。しかしその感染力は強く、一見、感染犬に触れていないように見えても、同じ空間で生活している犬同士はほとんどの場合、感染してしまいます。

ここ最近ではあまり感染犬をみかけなくなったものの、成犬や老犬での感染はまだまれに見られます。それらもやはり犬が集まる施設で感染しているようです。

動物病院に来院されるときには、感染源となる犬の特定は非常に難しい状況ですので、「これだ」と特定できる原因は分かりません。主に考えられる原因としては、トリミングやペットホテル、ドッグカフェなど、日常生活の中で犬が集まるような施設での感染が疑われます。

■耳疥癬の予防及び治療法

耳疥癬は、発症すると激しいかゆみに襲われますので、何よりも予防してあげることが大切です。まずは、素性のわからない犬が集まる場所は、なるべく行かないようにすることが重要です。

近年では、ドッグカフェやドッグラン、トリミングやペットホテルなどの施設を利用される方もたくさんいらっしゃいます。こういった施設の利用の際は、狂犬病や混合ワクチンの接種を義務付けているだけでなく、ノミ・マダニ予防も義務付けているところだとより安心です。また、近年のノミ・マダニ予防薬の中には、効能外使用(基本的に製薬会社が認めていないもの)にはなりますが、ミミヒゼンダニにも効果が認められるものがあります。そういった予防薬の利用も有効です。

もし、耳疥癬を発症した場合は、滴下タイプ、あるいは注射タイプあるいは飲み薬タイプの駆虫薬で治療します。駆虫薬を使うことで、ミミヒゼンダニはほぼ完全に駆除することができます。しかし、駆虫薬の中にはイベルメクチンという薬剤があり、これはシェルティーやコリーには使えない駆虫薬なので、使用時には十分注意してください。

耳血腫を併発してしまった場合には、耳介に溜まった血液を抜き、炎症をコントロールするためにインターフェロンやステロイドを注入したりします。そして、治療には場合によっては数週間から1ヶ月ほどの治療期間を要し、また治療後は耳介の形が変形してしまいます。そのため、耳介の変形を抑えたり、治療期間を短くするのに、外科的な処置を行うこともあります。

もちろん、外科的な処置には全身麻酔が必要になります。特に老犬の場合は、状態によっては麻酔のリスクが生じることがありますので、十分に全身状態をチェックした上で実施する必要です。

耳疥癬に感染している犬の生活空間には、たくさんのミミヒゼンダニが散乱している状態です。また、同居犬や感染犬と接触した犬は、たとえ耳を痒がっておらず、感染がはっきりしなくても、感染していることがほとんどです。なので、他の犬への感染を予防するために、ハウスダスト対応の掃除機などでしっかりと掃除をすること、ミミヒゼンダニにも効果がある駆虫剤を使用し、発症する前に駆虫してしまうことが有効です。

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■まとめ

耳疥癬は、犬同士への感染力が非常に強い、そして耳を痒がるなどの強い外耳炎症状を引き起こすとても厄介な病気です。また、老犬では耳疥癬に気づかないことが多く、中には耳血腫を併発することがあり、注意が必要です。

耳疥癬にかかってしまった場合、しっかりと治療することで完治させることはできますが、周りの犬へ感染しないように、治療期間中は他の犬と接触しないようにしましょう。

また、ペットホテルやトリミングなど、他の犬が集まる施設を利用するときは、衛生環境が整っていて、ノミ・マダニ予防も義務付けている施設を選んであげることで、感染リスクを減らすことができます。

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