2017年06月13日  

<高齢猫に落ち着きがないのはなぜ?猫の甲状腺機能亢進症について>

こんにちは!!
今回は『猫の甲状腺機能亢進症』についてお伝えします。
本記事は、過去に私が寄稿したものを許可を得て転載しています。
無断での引用、転載は禁止しておりますので、ご了承ください。




【甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)とは】

甲状腺からは、サイロキシン(T4)とトリヨードサイロニン(T3)と呼ばれる「甲状腺ホルモン」が分泌されますが、甲状腺機能亢進症を発症すると、そのホルモンが過剰に分泌されてしまいます。

通常、甲状腺ホルモンに限らず、体から分泌されるホルモンは、脳や体の様々な部位によって分泌量を調整されるため、常に体に見合った量が作られています。しかし、甲状腺機能亢進症になると、甲状腺ホルモンの調節機能が働かないため、過剰に分泌された甲状腺ホルモンがどんどん体中を巡ってしまい、様々な症状を引き起こします。

hangover

【甲状腺機能亢進症の症状】
甲状腺ホルモンは体の代謝を亢進(通常より高まること)させるホルモンです。ざっくりとしたイメージとしては「体の機能が異常に活発になる」ということです。

見た目にも不自然に活発化されますので、甲状腺機能亢進症の猫は非常に落ち着きのない態度(ちょっとしたことですぐに興奮したり、常に何かを狙っているような顔つきになっていたりなど)を示すようになります。

一見、活発になるなら、それはそれで良いようにも思えますが、実は甲状腺ホルモンが過剰に分泌されると、たくさんのエネルギーが消費されてしまいます。それが「落ち着きがない」という症状以外にも様々な症状を引き起こしてしまい、たくさんの食事を摂るようになったり(多食)、その割に体重が落ちていったり(体重減少)、あるいは攻撃的になったりもします。

さらには嘔吐、多飲、頻呼吸(”ひんこきゅう”呼吸が浅く、回数が多い状態)なども見られ、ほとんどの猫では、心雑音、頻脈(脈拍数が通常より多い状態)、さらにはレントゲン検査で心臓が大きくなっている所見が認められます。血液検査では肝酵素系の数値(ALTやALPなど)が上昇します。

また、病気が進行してしまうと、逆に元気がなくなり、ぐったりするようになるので注意が必要です。

【甲状腺機能亢進症の原因】
甲状腺機能亢進症は、ほとんどが高齢の猫に発生し、犬の甲状腺機能亢進症は非常にまれです。しかし、なぜ猫だけに多いのか、そして、なぜその中でも特に高齢の猫に多いのかはわかっていません。

【甲状腺機能亢進症の予防及び治療法】
甲状腺機能亢進症は原因が不明のため、確実な予防方法は今のところありません。
もし甲状腺機能亢進症になってしまったら、治療は大きく分けて3つの治療方法があります。
1. 内科療法
2. 外科療法
3. 食事療法
甲状腺機能亢進症を治療すると、それまで甲状腺ホルモンの作用によって隠れていた病気がはっきりと症状を表すことがあります。中でも腎機能低下症は、甲状腺機能亢進症の治療を開始後に症状を示すことが多く、注意が必要です。

1. 内科療法
内科療法では、チアマゾールなどの甲状腺ホルモンの合成を抑える薬を使って治療します。甲状腺機能亢進症においては、この甲状腺ホルモンの合成を抑える薬を猫の生涯ずっと飲ませ続ける必要があります。

外科療法を選択する場合でも、全身麻酔に耐えられる状態にするために、最初に内科療法を行うことがほとんどです。

チアマゾールなどによる治療は、効果が現れるまでに1週間以上かかることもあります。さらには元気が無くなったり、嘔吐、血液検査の異常といった副作用を示すことがありますので、治療にあたっては定期的な検査などで副作用のチェックをしていく必要があります。
また、チアマゾール以外にも症状や副作用に合わせて、補助的に他の薬を併用することもあります。

La prise de sang et l’analyse sanguine permettent d’étudier les composants du sang. La numération-formule sanguine apporte ainsi de nombreux renseignements.

2. 外科療法
外科療法では甲状腺を摘出する手術を行います。手術方法はいくつかありますが、ほとんどの場合、低カルシウム血症(血液中のカルシウム濃度が低下する病気)などの合併症がなければ、術後はお薬を使ったりせずに過ごせるようになります。逆に甲状腺ホルモンが作られなくなって、甲状腺機能低下症になることは非常にまれです。

しかし、外科手術の際、副甲状腺というカルシウム代謝を調整する器官が障害されると、低カルシウム血症が生じることがありますので注意しなくてはなりません。そのため、通常術後1〜2週間はカルシウムのチェックのため、入院管理が必要になります。

3. 食事療法
キャットフードの中に、猫甲状腺機能亢進症に特化したフードが発売されています。フードに含まれるヨウ素の量を非常に低く制限しており、甲状腺機能亢進症の猫の症状を緩和させる効果があるとされています。

内科療法や外科療法に比べると、副作用や合併症といったリスクがありませんので、猫に負担をかけずに治療をすることができるでしょう。

実際に私も治療で使うことがあるのですが、今のところ、治療効果は良いと考えています。
しかし、まだ甲状腺機能亢進症の療法食は発売されてそんなに時間が経っていないため、もっと十分な治療効果の検証が必要だと思いますし、さらに長期的な治療効果については未知数なところもありますので、かかりつけの獣医師の診察を受けながら使用するようにしてください。

ご飯を食べる猫

【まとめ】
甲状腺機能亢進症は、ほとんどが高齢の猫に発症します。また、最初は「歳とったのに、なんとなく活発になったなあ」というような、一見、病気の症状とは思われない状態ですので、気付かないことも多々あります。しかし、血液検査やレントゲン検査では、特徴的な所見を得ることができます。少しでも甲状腺機能亢進症を疑う時は、動物病院でチェックしてもらうようにしましょう。

また、甲状腺機能亢進症になってしまった場合でも、今はうまく管理しながら治療することができるようになっています。猫や飼い主様の状況に合わせた治療を選択してあげてくださいね。

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
森のいぬねこ病院
http://morinoinuneko.com/

森のいぬねこ病院Hillside
http://morinoinuneko.com/hillside/

森のいぬねこ病院LINE@
ID: msp1206d

院長 西原克明のfacebook
https://www.facebook.com/katsuakin
(お友達申請大歓迎です!!)
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
にほんブログ村 その他ペットブログ 動物病院・獣医へ

動物病院・獣医 ブログランキングへ



©森のいぬねこ病院