2017年06月03日  

<猫の膿胸は早期発見が大切!初期症状と主な治療方法>

こんにちは!!
今回は『猫の膿胸』についてお伝えします。
本記事は、過去に私が寄稿したものを許可を得て転載しています。
無断での引用、転載は禁止しておりますので、ご了承ください。



■ 猫の膿胸とは
膿胸(のうきょう)とは、なんらかの原因で胸腔(きょうくう)に膿が溜まってしまう状態のことを言います。胸腔は、肋骨の内側にあり呼吸をするときに新鮮な空気を吸った肺が膨らむためのスペースのことを言います。膿胸ではそのスペースが膿で充満してしまうため、呼吸困難となり、非常に危険な状態に陥ってしまいます。ですので猫の膿胸はできるだけ早期に発見し、早期治療を行うことが大切です。
しかし、猫の膿胸の非常に難しいところは、早期発見をするにも、膿胸を発症した初期の段階ではほとんど症状を示さず、症状に気づかないという点です。しかし、普段から猫の状態をよく観察していれば、わずかな症状に気づき、末期に進む前に病気を発見することができます。

■ 猫の膿胸の症状とは
2 Tigerkatzen im Streit前述しましたが、猫の膿胸では初期症状に非常に気づきづらく、それが病気をより重篤なものにしています。猫の膿胸の原因のほとんどが、胸腔に貫通する外傷、つまり猫同士のケンカで爪や牙が胸に刺さってしまうことによります。そしてその外傷によって爪や歯の細菌が胸腔内に侵入し、感染および膿を発生させます。その膿は数日あるいは数週間の時間を経て、胸腔内にどんどんとたまり、やがて肺が膨らむスペースを膿で占拠してしまい、呼吸困難を引き起こします。ここまでくれば、症状として、呼吸困難はもちろん、元気食欲の低下、少しの運動で苦しくなってしまうというような症状が明らかになります。
しかし、ここまで進行してしまうと明らかに末期症状ですので、大変危険です。そのため、膿胸をなるべく早く発見するためには、以下の2点に注目することで、早期発見につながることがあります。
● 外傷の痕跡を見つける
● 呼吸数の増加
これらは、普段から、しっかりとスキンシップをとっていること、安静にしているときの呼吸を確認していることで、何かしらの異常があったときに気づくことができます。特に同居猫がいる場合や、外に出ることがある猫は、膿胸のリスクが高いと言えますので、普段から傷はないか(これは胸に限らず全身をチェックできると良いですね)、安静時の呼吸はどれくらいか(通常は1分間に何回呼吸をしているのかを測定します)をチェックするようにしましょう。
ちなみに、胸部の外傷は数日で消えてしまうことも多く、実際に動物病院に来院した時点では傷跡が確認できないことがほとんどです。また、呼吸状態も「なんとなく早いかな」程度ですので、一見症状だけをみていると「もう少し様子を見てもいいかな」と思いがちですので注意が必要です。猫 治療

■ 膿胸の治療
膿胸の治療は、重度であればあるほどリスクが高くなってしまいます。まず、呼吸困難を起こしているレベルの膿胸では、一刻も早く胸腔内に溜まった膿を取り除かなければなりません。そのため、胸腔穿刺といって、胸に直接針を刺して膿を吸引する処置を行います。しかし、多くの猫は針を刺されることを嫌がるため、しっかりとした保定(猫が暴れないように押さえること)や場合によっては鎮静剤を使ったり、全身麻酔を用いて処置することがあります。しかし、ただでさえ膿で呼吸困難を起こしている猫に無理な保定や麻酔処置を行うと、さらに呼吸状態を悪化させてしまうリスクがあるため、場合によっては命に関わる処置と言えます。
無事に胸腔穿刺によって呼吸困難が改善した場合、あるいはそこまで重症ではない場合には、胸腔洗浄といって、胸腔内に残った膿を洗い流す処置を行います。これはほとんどの場合、一度の処置ですっかり良くなることはなく、何度か繰り返す必要があります。また病院によっては、胸腔穿刺後、あるいはこの洗浄用に胸腔にチューブを設置することがあります。
さらに膿胸の猫では、抗生物質でしっかりと細菌感染の治療を行う必要があります。抗生物質は様々な種類があり、また細菌の種類によって効き目がまったく違ってきますので、必ず「培養検査」「感受性検査」という、どんな細菌がいて、どんな抗生物質が効果的なのかを調べる検査を行い、その結果に基づいて抗生物質を使用します。この抗生物質の使用期間は、場合によっては数ヶ月に及ぶこともあります。

■ まとめ
猫 触る猫の膿胸は、初期症状に気づきづらく、かといって進行してしまうと命の危険が伴う非常に危ない病態です。特に外に出たりする猫、他の猫と同居している猫は、ケンカによる膿胸のリスクが高まります。少しでも早く膿胸を発見できるように、普段から猫の体の傷のチェックや呼吸状態の確認を心がけていただければと思います。

©森のいぬねこ病院